粒子法とMpaveのインテグレーション
はじめに
- SPH(Smoothed particle hydrodynamics)法などのいわゆる粒子法は、粒子の運動に従うラグランジェ的方法により記述されたメッシュレス(グリッドレス)解析法であり、解析領域が大変形し、境界が複雑に移動する問題には従来の手法よりも適合性が高いことが知られています。ここでは、SPH粒子法の前・後処理プロセッサとしてCAE支援環境Mpaveを用い、自動的にCADデータから解析対象モデルの粒子を生成させ、そしてSPH粒子法ソルバーで解析できることを紹介します。
解析例
回転落下による複雑構造物の損傷シミュレーション
- 問題設定
下図に示すようなアルミニウム製の携帯電話の斜め落下損傷解析を実施しました。解析は、①1.2mの高さから階段へ自然落下する場合と、②亀裂を発生させるため携帯電話に初期不正を与え、高速に床の角へ衝突させる場合の2ケース実施しました。
- Mpaveによる粒子生成
落下解析は、携帯電話設計事業では日常的におこなわれていますが、従来の有限要素法ソフトウエアによる解析では、複雑形状の要素モデル化が難しく、解析作業上のボトルネックとなっています。しかし、粒子法シミュレーションではメッシュ作成が不要であり、解析データ作成はそれほど困難ではありません。
そこで、Mpaveを使用し携帯電話の3次元形状STLファイルを読み込み、解析用の粒
子モデル(粒子数32500)を作成しました。下図にSPH/Mpaveによる解析の流れを
示します。
データ作成 解 析 可 視 化
Mpaveによる SPH粒子法解析 Mpaveによる
粒子自動生成 ・1CPU(最大400万粒子) 後処理
・並列システム
(400万粒子を超える大規模計算)
- 解析結果
下図は、同モデルの斜め落下によるシミュレーション結果です。
このようにCAE支援環境Mpaveを用い、効率よくCADモデルから粒子法モデルを自動生成し、SPH粒子法による解析を実施することが可能となります。
参考文献
- 酒井譲、張崇偉、山縣延樹、菊地正樹、“構造物の破壊解析への粒子法の応用” 日本機械学会第18回計算力学講演会論文集(2005)
- N. Yamagata, Y. Sakai, P. Marcal, Elastic-Plastic and Fracture Analysis of Mobile Phones using SPH, ASME PVP2006-ICPVT11-93614, July 2006